そんな時、
「ねえ神木くん?どれにする?」
って山本さんが竜馬に話しかけた。山本さんは美に関して知識が薄いわたしでさえ可愛いと思う。パッチリとした二重に、ストレートなショートボブ。吹奏楽部の彼女はトランペットが上手らしい。
竜馬、見ないでよ。
わたしの方向いてよ。
「ん…?ああ、これ。」
竜馬は最近やっぱり前より喋るようになったのかな。
わたしだけにしてよ、話すの。みんななんか放っておいてよ。
わたしはきっと、腹黒い。
「そっかあ!わたしもこれがいいと思ってた。みんなもこれで大丈夫?」
さっきもう決めたのに、二人で。
山本さんが進行しないでよ。わたし達が最初からいたのに。
「…うん。」
だけど弱気なわたしは小さく首を縦にふるだけ。
「おっけ!じゃあ決まりね!次はどうする?」
そう言って、また、竜馬を見る。上目遣いしないでよ。可愛くしないでよ。
わたしってきっと、恋して最低な奴になってる。
こんなんだったら恋なんてしたくなかった。
わたしには、初心の淡い恋心で十分だったのに。
「咲、どうしたい?」
わたしの名前、言ってくれた。わたし達の関係ばれたくないけど…優越感に浸っているわたしがいるのも事実。わたしの竜馬なんだから!って。これじゃあ少女漫画の悪キャラじゃんか。
ヒロインは、いつだって純粋で天然でまっすぐなのに…


