「おーい、斎藤。」
先生がペシッと教科書で背後の生徒の頭を叩く。
「何寝てんだ?」
振り向けば、眠気まなこでむっくりと起き上がる生徒が一人。どこか抜けているこの人は『成績最下位授業爆睡優男』、だ。まるで魔術みたいに覚えられているこの句は、学年内でも有名な話だ。
斎藤歩(さいとうあゆむ)
あまり話したことはない。
「ここのグループ入れ。」
そう先生がさすのは、ちょうどわたしが彼の前の席だからか、わたしたちのグループ。男子がもう一人はいることでどこか安心しているわたしは、勝手に山本さんに対してハラハラしている。
「………ぁい。」
「返事ははい!」
「…はあい。」
先生…今日はどうしちゃったの?奥さんと喧嘩でもした?
それが伝わったのか、
「集中!」ってわたしまで怒られた。
「フッ。」
笑い声が聞こえてムッと顔を上げれば、竜馬がニヤって笑ってた。
こいつうう!!!
「バーカ。」
こいつのいつものおきまりの台詞まで吐かれてしまった。


