ユリが言ってた、
『竜馬、あいつ変わったな。』って。
ユリ曰く、竜馬は前よりも表情豊かになったらしい。あと、人との会話を極力避けてた彼が、最近は些細なことでも、例えばぶつかった時に、『ごめん』とか、プリントをもらった時に、『ん。』じゃなくて、『ありがと。』って言うようになったって教えてくれた。
ユリ、同じクラスでもないのにすごいよね。情報綱が広いらしい。どこで手に入れてるのかは不明だけど。
「はい、えー、今日はグループごとに出題してもらいます。」
先生の声が流れてくる。12月に突入した今、みんなは冬休みを目標に頑張っている。雪、降ってほしいな。わたしは静かにそう願う。お父さんと雪合戦、してみたいな。
いつの間にかグループは各自適当に決める、ということになっていた。
ちらりと振り返れば、相変わらず夏帆と二人がくっついていた。もう一人のグループの子は隣のクラスだから、ここにはいない。奇数で固まっているところに、前のわたしだったら迷いなく声かけてた。『一緒になってもいい?』って。
でも今は…………
「咲、」
竜馬が迷いなくプリントに目を通す。そんな何気ない仕草も、驚くくらい様になってる。
「これにする?」
そう言って課題の中の一つのトピックをあいつは選ぶ。
もう言わなくてもお互いわかってる。同じグループだって。それが飛び上がりたいほど嬉しいんだ。
そんなところに……
「仲間にいーれて!」
って、一人の生徒が声をかけてきた。
山本美波(やまもとみなみ)
調理実習の時に、ピンク色の袋に包んだクッキーを竜馬にあげた子だ。
ぎくって体が反応する。ダメだよ、って。
でもわたしは笑顔で頷く、「いいよ!」
首振らなきゃ。二人でするから大丈夫って…なのに…ああーどうしてこうなっちゃうんだろう。
四人グループを作らないといけないらしい。だけどおじいさん先生はあまりしっかりしていないから二人でやってても気づかれないことが多い。だけど今回はどうしてかはっきりしている。
ボケ手術でもしたのかな。