11月はダウンジャケットの上にさらにマフラーを巻かないといけない季節だ。

何もしていないのに、スーパーの冷凍エリアに行ったみたいに、鼻の奥がつーんとする。

竜馬とお揃いの青いマフラーを首にぐるぐると巻いて玄関を出る。


「行ってきます!」

「行ってらっしゃい咲ちゃん!」


お母さんがドアを開けながら手を振ってくれる。

きっとこれが、竜馬の言う『大事にしろよ』なんだよね。


優しい目をしたお母さん。この頃少し、しわが増えてきている。


家の中は伶奈の引越し荷物でいっぱいだ。可愛い服があふれていて、まるでお店やさんみたい。


ローファーの硬い靴底が痛いし、爪先の方が少し窮屈になってきている。

まだ背が伸びてるのかなあ、って、少しだけ嬉しい。



下り坂を降りて、コンビニの横を通って、公園のそばまで歩く。

そこで、大好きなあの人を待つんだ。


ドキドキする。

何て言われるんだろう。

無視されるかな。

怖い。

怖いけど、行動しないと意味がないって、君が教えてくれたんだ。


会いたい!会いたいのに……怖い。


今日の髪型は大丈夫かな?スカート短すぎない?左目が二重になってないから彼の左側を歩こう…って、彼が気にも留めないようなことで一人自意識過剰になってしまう。


こんな自分初めてだよ。どうすればいいの…?

竜馬のことばっかりだよ…



「あ…」



白く吐き出された息の先。


黒いコートのポケットに両手を突っ込んで…


赤いマフラー、つけてくれている。