翼を広げて


「誰もっー」


「うるせえ!!!俺が悲しいんだよ!!!」



っ………っえ?



「お前が消えたら、俺どうすればいーんだよ!あ!?」



竜馬が両手をわたしの肩において強く揺さぶった。



「俺だって誰もいねーじゃんかよ!!自分でいっぱいいっぱいになるなよ!!俺はどうなるんだよ!!!!」



竜馬のドスの聞いた低い声がわたしの中の何かを揺らした。

竜馬が………悲しむ。



誰もいない。

誰もいない。


そう思ってた世界に、竜馬が現れてくれたんだ。



「お前クソだよ。」


「っ……っぅ。」


「そーだよな。俺は好きでもなんでもないどうでもいいやつなんだよな。」


っ…え………聞いてたの、もしかして、前の会話っ…?


「っちが、」


「ムカつくんだよ!今の幸せ気づけてないお前が!毎日お弁当があるお前が!!今の幸せ大事にしねえお前が!」



わたしはそのまま泣き崩れる。

竜馬の乾いた手が両肩から離れる。


ギリギリと握り締められて震えるそれらが、涙の奥でぼんやりと揺れる。


「誰もいないだあ?お前のそばにいてやってる俺はなんだよじゃあ。ただの空気かよ。」


竜馬の声が、心に突き刺さった。


そうだ、いつも、竜馬がいてくれてるじゃん。


今だって、竜馬がこんなにもわたしのために必死になって怒ってくれている。


『大事にしろよ』


竜馬、前だって、そう言ってくれたよね。