翼を広げて


わたしの心の声が聞こえたのか、竜馬は振り返る。

わたしの全てを見透かしたようなその瞳で、わたしを見るんだ。


「咲…」


竜馬はその薄い唇でわたしの名を呼んだ。


「お前…やっぱり、施設にいなかった?」


……………



なんで…………



そんなこと、聞くの。



「…悪い。」


竜馬は赤いマフラーで口元を隠すと、ガラクタに横になった。


眠っているのかいないのか、瞼を閉じた竜馬はまるで絵に描いたように綺麗だった。


「…いたって言ったらどうする?」


竜馬が微かに目を開ける。

まつげで縁取られた奥に光るビー玉。


「なんで聞くの。」


わたしは歯に挟まったブロッコーリを転がしながら言う、


「あんたもいたの?」


竜馬は静かに起き上がる。

少しだけ跳ねている髪の毛が、竜馬を幼く見えさせた。


「ずっと前見たんだよ。優しそうな親と女の子が、養子縁組に来てるの。」


竜馬はたまにふっと見せる寂しそうな顔をしている。


「だけどその女の子、前からずっと来てた。ボランティアで。」


竜馬はわたしに視線を移す、


「お前じゃねえの?」


胸の奥がいたい。


小刻みに震えている体は抑えようもない。