ベッドに横たわりながら赤い毛糸のマフラーを道の街灯の光でかざす。
「……バカみたいじゃん。」
結構頑張ってたつもりだった。毎日家に帰ってきたら、マフラーを編んでた。ずっと前あの人が教えてくれたように、一生懸命編んだんだ。小さい頃お父さんは言ってた。
『赤が大好き!咲の好きな色も、赤だよな?』
って。だからわたしの一番好きな色は赤だった。
本当にバカみたいだ。
今頃40代のおじさんが赤いマフラーなんてしないよね……そりゃあ、手編みなんかより、ブランド物の方が嬉しいよね。
本当、バカみたい。
手紙も、ありきたりのことしか書いてない。『お誕生日おめでとう!』って。『いつもありがとう!』、『お仕事頑張ってね!』って。
本当はもっといっぱい伝えたいことがあった。
学校で辛いこと。
もっとお父さんと遊びたいこと。
お父さんに話を全部聞いてもらいたいこと。
伶奈は、まだ…我が家に来なくてもいいんじゃないかってこと。
ショートケーキが嫌いなこと。
いっぱいいっぱい伝えたいことはあったのに…なにも、書けなかった。
どうしてだろう…
涙で濡らした枕の先に、竜馬の優しい横顔が見えたような気がした。