「家、どこ?」
わたしは竜馬に問いかける。
二人で帰るのは、初めてじゃない。
火曜日は、だいたい竜馬と遭遇する。
だから抵抗もなく二人で帰ってるんだ。
「…んー秘密。」
「ははっ、なにそれ。」
「咲は?」
「秘密。」
「真似っこ。」
竜馬はそう言って口角を上げた。
竜馬が笑った顔は、誰にも見て欲しくない。
だって、こんなにも…かわいいんだもん。
「ねえ、」
「ん?」
「そのクッキー全部食べるの?」
どうしてこんなにも気になるんだろう。
食べるのはわたしのだけでいいじゃん、って、そう思う自分が怖かった。
「わかんない。」
竜馬はそう返した。
「かわいいクッキーが好き?」
まただ。
どうして聞いても仕方のないようなことをまた…。
「…美味いクッキーが好き。」
「ふーん。」
「お前のクッキー好き。」
「………あっそ。」
竜馬はそのあと何も言わなかった。
わたしも何も言わない。
空は燃え上がるような紅色に染まっていた。


