「いいよ。」
「ありがとう!やっぱ咲は最高だわ!」
悪びれも無くわたしの数学のノートを開いて写し始める彼女を横目に、わたしは斜め前の自分の席に腰をかける。
「写し終わったらちょうだい。」
「オッケ!」
一限目はなんだったかなと思いながら教科書を漁る。
周りの子が数学の宿題を出しているのを見て、ああ、そうか、数学か、と思う。
こうやって周りを見て気づくわたしはぼんやりと思う。
きっとわたしが人間として生まれてきたから、これからも永遠と集団行動を続けないといけないのだろう。
それだったらいっそ鳥にでもなりたかった。
教室の窓の外に見える空は青く晴れ渡っている。この窮屈でむしむしした部屋と、どこまでも続く晴天を隔てているこの窓を見て、ため息が漏れる。
ただただ、誰にも邪魔されず、あの美しい空を飛び続けたい。それだったら、なんと幸せなことか。
軽く頭を振って自分を現実世界に引き戻す。
教室は相変わらず騒がしくて、背後にいる夏帆は相変わらずわたしの宿題を完璧に写している。
憂鬱だ。