「今日の空は………………恋の色……。」
そう耳に流れ込んできて、わたしもトイレの天窓を仰ぐ。
夕焼け空は、淡い桃色と蜜柑色に染まっていた。
確かに………恋の色。
誰か優しい少女が少年に抱く、綺麗な恋心。それを映したような、綺麗な空だった。一羽の鳥が飛んでいる。雛鳥に餌でも探しているのかな。
やっぱり、鳥になって飛んでみたい。飛べないよ。大変かもしれないよ。それでも、たった一羽で大空を羽ばたいてみたいんだ。
一人でも、怖くない。
そう思えたら、どんなにか楽だろう。
もう夏帆のぐだぐだに付き合わなくたっていい。
無理に会話を合わせなくてもいい。
本当はスカート短すぎて不安だったから、もうそれもしなくていい。
ほとんど色が変わることのない540円のリップだって、透明になって意味のないマニュキアだって、もうしなくていい。
歌声が止まっても、わたしはなかなか動けなかった。
わたしは手元にあるクッキーの袋を見て、悔しくなった。
甘い物作りなんて大っ嫌い。
二度と、見たくもない、こんなの。
そんな思いで、下駄箱を駆け出て、校庭のゴミ箱にそれを投げ捨てようとした瞬間…
「もったいねえやつだな。」
ひょいっと手元にある袋が一瞬にして消えた。
急いで振り返れば、いつの間にかいたのか、今日もまた、あいつに出くわした。


