授業が終わると、皆思い思いにクッキーを包んで大事そうに持ってた。
わたし、あげる人いないや。
一人で食べるのにも…んんー。甘いもの、苦手なんだよね。
ショートケーキが嫌い。
パンプキンパイが嫌い。
シナモンロールが嫌い。
アップルタルトが嫌い。
イチゴジャムが嫌い。
女子は可愛く飾り付けなんかしてるけど、わたしのはただの茶色い紙に包まれている。
デコらないと…みんなと、同じにしないと…
そう思ったのに、なぜだか、今日はみんなと『同じ』にするのに抵抗があった。
結局誰にも渡さず放課後になった。火曜日だからみんな部活。わたしはぶらぶらと廊下を歩きながら女子トイレへ向かう。
トイレで手を洗ってると……
また、聞こえたんだ。
あの歌声。
「………夜空………見上げて、泣いたって………僕は、一人でも……怖くない。」
胸の奥にじんわりと染み渡る、透き通った低音の声。
鏡に映る自分の顔が情けなく見えた。
口角を上げて笑ってみても、全然嬉しそうになんか見えない。
怖くない。
怖くない。
そう何度自分に言い聞かせてきたことか。
この人も…同じなのかな。