その何気ない時間。
どうってことない瞬間。
それを、楽しい、って思えた。
初めてだった。
学校を楽しいと思ったのは。
いつもは大学のため。将来のため。と、自分に無理やり言い聞かせ、成績のためだけに必死に頑張ってた。
古典の授業中、みんながいつもと変わらないようにシャーペンを滑らせている中、わたしだけいつもと気分が違ったんだ。
隣にいるあいつが見せる不意打ちの笑顔とか、たまにわざと無視して来る時とか、そんなことすべてが、『楽しい』。
そう、思えたんだ。
カリカリ。カリカリ。
どこまでも続くその無機質な音。
だけどわたしには全く聞こえなかったんだ。
竜馬の強い瞳に吸い寄せられていて、授業の内容なんて全然入ってこなかった。
楽しいって、こんな気持ちだったんだ。
忘れてた。
幼子に戻ったかのように、昔捨てかけた純粋なワクワク感を、久しぶりに感じられた。
のんきに落書きしているあいつに口パクで言ってやった、
『ありがと、バーカ』って。
そしたら、
『あ?』
って竜馬が顔を上げたから、
『なんでもないよー』
って軽く舌を出した。みんなにばれない程度にね。
そしたらそれを理解したのか、あいつも舌を出した。それは盛大にね。みんなの目とか全く気にしないあいつだから、
これが楽しいって気持ちなのかな。
だったら嬉しいよ、わたし。
バカ竜馬、ありがとさん。