授業が開始してから、わたしはじっと竜馬を見ていた。


人とは全然違う。

だけど優一、みんなが知っている有名人。


その理由はただ一つ。



ー自分らしくいるからだ。



フッと目が合った。

お昼の事もあり、どこか気兼ねしている自分。

勝手に傷ついているだけかもしれないけど。


自分自身に。


竜馬は何を言うでもなく、じいっとわたしを見返す。

その驚くほど澄んだ、泉の底から湧き出る真水のような瞳で。


窓から注ぎ込む日光が、黒い瞳の中にたくさんの白い光を踊らせている。

吸い込まれそう。


『惚れた?』


そう口パクであいつは言うんだ。


「は?」


思わず声に出して言えば、


「藤宮さん、授業中ですよ。」


って古典の先生に注意される。


ムッとふてくされて、すいません、と答えれば、竜馬がニッと口角をあげた。


こいつ、この頃よくバカにするように笑うな。

なんて思ってジトーっと見返せば、


『バーカ』


って笑うんだ。