「おはよう。」

わたしが教室の角にいる女子たちに話しかけると、

彼女たちは振り返って明るく挨拶を返す。

これもいつものこと。


わたしのグループは派手すぎず地味すぎずの、

いわゆる『普通』だ。


「咲、宿題やった?」


アーモンド型の目を細めて聞いてくる子は、

特に綺麗なわけでもなく、可愛くないわけでもない、

普通な顔立ちをしている。


「うん。夏帆も?」


「わたし忘れちゃったんだよねー。」

そう言って笑う彼女は、愛嬌のあるエクボをくぼませている。

男子がこれを見て可愛いと騒いでいるのを聞いたことがある。

わたしにはわからない。

「どうするの?」

「写させて!」

そう言って手をあわせる彼女を見て、わたしは微笑んで頷いた。

もしこれで嫌だと首を振ったら…わたしはどうなる?

本当は、自分だけ得している夏帆がいやで、

毎朝宿題を写させてあげているのが腹が立っているって伝えたら、

わたしの立場は…?