「やっぱ咲って名前、お前にぴったりじゃん。」
竜馬は微かに目尻を下げた、
「大事にしろよ。」
その言葉が、胸に響いた。
どの意味で言ったのかわからない。咲って言うわたしの名前のことなのか、自分ということ自体の意味でなのか…
それでも、身体の中で音楽隊が静かにオーケストラを奏でているみたいに、しみじみとした幸せっていうのを、少しだけだけど、感じれた。
そのあと、神木竜馬は担任の先生に見つかり小言を言われ体育に戻っていった。
仮病だったっぽい。
そしてわたしも頭痛が引き神木竜馬と喋っていたことから体育に連れ戻された。ペアは相変わらずいなかったけど、それでも、そんなこと気にならないくらい、わたしは清々しい気分だった。
遠方の男子の群れの中からすぐに背の高い竜馬を見つけ、一瞬だけ目があったような気がした。
どうしてだろう。
ちょっぴりだけ、嬉しかった。
ー淡い青春は、もうすぐそこに迫っていた。