翼を広げて


ダメだ…

ダメだ…っ


絶対にダメだ。

そうわかってるのに、視界が勝手に霞んでくる。


『良い親じゃん』


神木竜馬は知らない。その言葉が、どれだけわたしを勇気付けてくれるのか。

大きく息を吸ってみるけれど、頭の奥がジンジンして、鼻の奥からすっぱい味が伝わって、口の中が乾いてる。

ひっく、って、赤ちゃんの頃よく感じたあの鉛が喉の奥につっかえている。


今日のわたしはどうかしてる。おかしいよ、こんなの。


必死に地面を見つめる。

うつむくのは久しぶりだった。


下を向いたらダメ。挫けたらダメ。そんな想いを自分に押し付けて、永遠と続く空を見上げ、自信をつけていた。


わたしの名前は似合ってなんかない。

わたし、笑ってないもん。偽りの笑顔なんて、きっと誰も求めてない。

華やかなんかじゃないし、道端に咲くたんぽぽのような優しささえも繕っていない。


でも…どうしてだろう、こんなにも泣けてくるのは。

それは多分…神木竜馬が嘘をつかないって知ってるからだと思う。


この人は、人を傷つける。それは、全て嘘偽りのないことを言っているからだ。


人の心を読もうとして疲れる。何を考えているのかわからないから探り合い、自分という存在を知らない誰かに塗り替える。


だから神木竜馬は素直で直球だから…もしかしたら…怒りをぶつけられたのかもしれない。真実が戻ってくるってわかってたから、わたしも本当の気持ちを投げ出せた。


校庭の砂利は意外と白っぽかった。

ありがせっせと何かを運んでいる。

ちっぽけな世界。ちっぽけだけど、みんな必死に生きている。


ああー…っダメだ…


白い砂に、茶色いシミが一つ、できた。


二つ、できた。


三つ目は、ほおを転がり落ちた。



っ…ぅ…っ



ここは学校!ダメ!ダメ…っ、だ…めえ…っ