翼を広げて


「おお、すごいじゃん!」

嬉しそうに笑う伶奈は今年小学三年生になったばかりだ。

すごく優秀な子で、愛嬌も抜群だ。そんな誰からもすかれるような性格をした伶奈は、人一倍わたしに懐いている。

「パンケーキ焼いたんだけど、食べる?」

いつものようにお母さんが尋ねる。

「伶奈が作ったんだよ!」

「伶奈は焦がしただけでしょ!もう大変だったのよ〜。」

お母さんは、呆れた、といった様子で首を振る。

「伶奈頑張ったもん!」

「はい、はい、そうですか。」

お母さんは伶奈には辛口だ。わたしにはとことん甘いけどね。

「いっただきまあーす!」

わいわいと食卓を囲み、わたしが一通り宿題も終わった頃、ピンポンとベルが鳴った。

「むう…。」

口を尖らせてわたしの隣ににむす〜っと座る伶奈は、ドアを開けにはいかない。わたしも開けに行かない。

だから仕方なくお母さんが開けにけば、

「こんばんは。」

「伶奈はどうでしたか?」

「いつものように元気いっぱいでしたよ。」

と会話をし、他人行儀に愛想笑いをしたあと、玄関にいるだろう男の人が伶奈の名前を呼ぶ、

「伶奈、帰るぞー。」

「やだー。」

駄々をこねる伶奈には慣れている彼は、今度はお母さんにこう尋ねる、

「今日は咲はいますか?」

「…えっ…と…」

玄関でお母さんの困ったような声が聞こえる。

「今は、ちょっと出かけてて…。」

「ああー、そうでうすか。残念です。」