静かで、まるで海の底から届いてくるような低く優しいハミングは、心の底のドロドロとした気持ちを消してくれる。

ふっとその歌声が止まった。

その途端、また今までの憂鬱な気持ちが戻ってきた。

だけど何故だか、どこかすっきりとしてた。

トイレを出て下駄箱まで向かう途中、さっきの歌い主さんが出てくるか見て見たけれど、結局現れなかった。

靴に履き替えていると、ふと背後に誰かを感じ振り返る。

最悪。

わたしは気づかないふりをして歩くけど、一定の距離で後ろにあいつを感じる。

うざい。

「…なに?」

イヤイヤ振り返れば、相変わらず気力がなさそうな立ち方で、意外と背の高い神木竜馬がいる。

「別に。」

「ついてこないで。」

「ついてきてない。」

そう言うからまた歩くけど、絶対にいる。