大きく息を吸うけれど、あまりにも見下されて泣きたくなる気持ちはおさまらなくて、わたしは自分の感情を沈めるように目を閉じた。
まぶたの裏に見えるのは、どこまでも続く暗闇。
いっそ、この闇に身を放り込んでみれたらどんなにか楽だろうか。
イライラすることのすべてから身を遠ざけて、完全にこの世界から消えてしまいたい。
だけど、それが本心じゃないことだってわかってるし、わたしはそこらへんのいじめられている子よりはずっと幸せだろう。
だから、現実と向き合うしかわたしに選択肢は残っていない。
なんてひどい人生なんだろう。
生きるってめんどくさい。
また今日も1日上の空で過ごした。昨日の今日でもう空き校舎に逃げることは許されない。明らかに怪しいからだ。
いつわたしの本性がバレるか。それに怯えながら過ごしている。
放課後、火曜日。
まだ週のうちで一番ましな日だ。
なぜなら、みんな部活がある日だから。それが導き出す輝きはただ一つ。わたしが一人で帰宅できること。
「みんな頑張ってねー!」
「あいよー!」
手を振ってみんなを見送る。
ドッと肩の荷が下りて、ため息をつく。
トイレ行ってから帰ろ。
友達がいるとめんどくさい。トイレにさえもいけない。『トイレいってもいい?』そのたった一行が怖くて言えない。
めんどくさがられるかもしれない。今行かなくてもいいだろって思われるかもしれない。トイレ近くね?って裏で囁かれるかもしれない。待ってくれないかもしれない。内心嫌だけど笑顔で対応してくれているのかもしれない。
こわい、こわい、こわい。
だから、火曜日が好きなんだ。


