「なんでそーゆーのしか見ねえの?」

「は?」


やばい。怒ってる、自分。


神木竜馬はむくっと起き上がると、不機嫌そうに口を開く。


「派手なものにしか目がいかない系?」

「は?」

「鳥がいかに大変な人生生きてるかってこと調べて欲しかったんだけど。」


いや、知らねーよ。

ていうか、調べただけえらくない?


「ほら、たとえば雀とか。あれ、楽しく自由に飛んでると思う?違うよ。常に天敵に狙われてて、それでも子育てとか生きるために餌を探してるんだよ。人間の方がよっぽど楽してるんだよ。自由なんて、軽々しく言うもんじゃねーよ。」


腹が立って、腹が立って、腹が立って仕方がない。


侮辱されたことによって浮かぶ熱いもの。


嫌い。

嫌い。

嫌い。



「神木くんってさ、無神経だよね。」



低く、それでも相手にだけ届く音量でそう伝える。



「お前ってさ…バカだよね。」



見下すように言う神木竜馬。


世界を映した瞳でわたしを見て言う彼。


別に、小さな音量でもない。


チラチラと視線を感じる。


バカだって知ってる。どういうつもりでそう言ってるのかしれないけど、わたしは自分がバカだって知ってるから、傷つく言葉でしかないんだ。


どうして。

どうして。

どうして。


答えにならない感情をぶつけるように口を開いた瞬間、先生が入ってきて、まるで何事もなかったかのように神木竜馬は黒板に視線を移した。


そういうところが、嫌い。苦手。大っ嫌い。