翼を広げて


本を棚に戻すと、わたしは何してたんだろ、なんて思いながら教室へと戻る。

いつの間にかさっきの怒りも消えていて、ただ、様々な鳥の名前がぐるぐると脳を回っていた。


結局何も決まらないままHRに突入し、5分休憩になった。

「なあ、鳥、調べた?」

いきなり声をかけられてびくっとしながら左を向く。

腕を机に伸ばし、その上に頭を乗せるような感じで上目遣いに見上げてくる神木竜馬。

昨日あんなに突き放しといて話しかけてくるとは、こいつは完全に気まま男だ。

わたし、あんたのこと怒ってるから!そう睨みをきかせれば、神木竜馬はフッと口角をあげた。

初めて見た神木竜馬の笑顔に言葉を失う。

キリッと鋭い彼の瞳が少しだけ緩んだ時、思わず心臓が一回跳ねた。


いやいや、わたしは怒ってるんだから。何びっくりしちゃってんだか。


すっと顔をそむければ、


「鳥は自由じゃねえよ。」


低い声が聞こえて、顔を動かさずにちらっと視線を向ける。


「なあ、調べた?」


こいつ、しつこい。

しかもこのシーンみんなに見られたら完全に終わるんだけど。

嫉妬やらなんやらでもみ消されるんだけど…ねえ、君、もしかしてバカ?それとも天然?

あれ、こいつそういえばみんなから嫌われてるんだっけ…?

まあどっちにしろわたしにプラスにならいのは確かだ。


「…調べたけど何か?」


いつもの自分では想像できないほど低い声。

誰も注目してないしいいよね。


「じゃあわかったろ。」

「……。」

「どうだった。」

「…綺麗な鳥いたけど。アメリカムラサキなんちゃら。」


会話したくないけどしつこいのも非常に困る。

むかつく。

昨日のこと完全に忘れてけろっとしてる感じ、すごい嫌い。

こっちはずっと考えてたのに。まじマイペースな人苦手。


「はあ…むかつく。」


は?

いきなりの言葉に顔を向けざるを得なくなる。

今、わたしむかつくこと一つでも言ったかな?