「貧困で困っててー恵まれてない少女でー、だけど最終的に幸せ掴むとか超真面目じゃん。」

他人事みたいにふざけながら言うみんなが嫌いだ。


「お腹すいて死んでまーす的な。」

「ははっ、ウケるんだけど。」

「義母さーん、いじめないでー!」

「あははっ。」


恵まれない人の気持ちにさえなれない人は、存在価値がないと思う。

どうしてそんなことが言えるんだろう。世界にはお金がなくて飢えている子供達がたくさんいるのに、それをバカにしたような口調で言う人が許せない。

どいつもこいつもバカだ。

バカのバカのバカだ。

だけどそれ以前に、そのことについて発言できな自分の方がバカだ。

何も言っていない自分は、みんなの目にどう映っているのだろう。

この低地脳で、恵まれない人のことをバカにできるような人たちと、一体化して見えているのだろうか。

それだったら自分もきっと最低だ。


「ちゃんとしろ男子ー!」


女子がわいわい言うけれど、男子と交流できて心なしか楽しそうだ。


あー。

憂鬱だ。


「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる。」


夏帆にそう告げて教室を出る。

扉を後ろで締めれば、すうっとイライラが収まった。