湿った土のもわもわがわたしを包み込む。
雨上がりの道路は泥んこになった犬の体臭のような匂いがする。
わたしは雨が嫌いだ。登校しにくいし、傘を持ち歩かないといけないし、靴が濡れることだってある。日焼けしないのがたった一つの救いかもしれない。
わたしたちの学校の行事はいつだって季節外れだ。
今年も文化祭は9月に訪れる。普通だったら2月なのに、今年度卒業する生徒の受験を妨げないよう、と、大人の論理があるらしく、夏休み明けから準備が始まる。
今日もその準備で、まるで運動部の生徒みたいに朝早くに行かないといけない。
帰宅部のわたしからしてみれば滅多にないことだ。
「おはよう!」
教室に顔を出せば、寝坊した数人と神木竜馬を除いて、毎朝顔合わせするメンバーが揃っていた。
「おはよう!」
いつもの輪に加わる。
「演劇主役は絶対やだなあー。」
夏帆の言葉にみんなも頷く。
今年の文化祭は、二年生は演劇や発表など、お客さんに対してのプレゼンテーション型の何かを行わないといけないらしい。
だけどもちろん話がぽんぽん進むことはなく、あれはやだとかこれもやだとかで、前進できずにいる。