「ご、ごめん…。」
なんで謝らなきゃいけないの。
わたし、何もしてないよね?神木竜馬がここにいるなんて知らなかったし、普通に入っただけじゃん。
なのになんでわたしが…。
どいつもこいつも、わたしはどうしてそんなペコペコ頭下げないといけないの。
わたしだって同じ人間だし。
同級生だし。
なのにどうして格差があるの。
「あーそういうのいいから。」
神木竜馬は眉間にしわを寄せてわたしをみる。
意味わかんない。
じゃあどうしろっていうの?
わたしは少し顔を曇らせて、わたしを見下ろしている異様なほど整った顔を見つめ返す。
「ぐだぐだしねえで出てけよ。」
なにその王様気取り。
もともとそのつもりだったし。
こんな感じ悪い人と同じ空気吸いたくないし。
もうなんなの!昨日シャーシンくれて案外優しい人なのかも、と期待したら、今日は出てけ?
ふつふつと込み上げてくるイライラを押さえ込むようにわたしは視線を揺らがす。
「ごめん…。」
「だからいちいち謝んなよ。うぜえ。」
「……。」
「ここ、俺の場所。」
…は?
まるで、世界は俺のものだ、と言わんばかりにガラクタの上に腰を下ろしている神木竜馬を軽く睨む。
ええ、ええ、言われなくとも出て行きますよ。
喉の奥にごめんの『ご』がつっかえたところで、自分がいかに日常生活で謝ってばかりなのかを実感する。
出てくる言葉がなくて、怖くて、だけどムカついて。
いろんな感情が入り混じった心を落ち着かせるように、わたしは最後にちらっと神木竜馬の涼しい顔を一瞥すると、そのまま音楽室を後にした。
最悪。
ほとんど喋ったこともない人になんてこと言ってるの?
頭がおかしいと思う。


