「…なれねえよ。」


え……。


ふと自分のものではない声が聞こえてきて、わたしははっと身構える。

だ、れ…??


穏やかな空気を引き裂くような、低い鋼のような声。



聞かれた。

やばい。


ぐるりと音楽室を見渡すと、窓辺の隣に、ガラクタが積み上げている一角があり、その上に身を投げ出している予想外の人物が視界に飛び込んできた。


錆びたトランペットやら折れた椅子やらの上に寝転びながら、面倒くさそうにわたしに上から流し目を向ける彼。


「鳥にはなれねえっつってんの。」


もう一度そう言われ、わたしは我に帰る。


「な”、なんでここに…」

「俺のセリフだよ。」

「…え?」

「いきなり入ってきたかと思ったら叫びやがって。うっせんだよ。」


な、なにこのひと…


何を思っているのかわからないガラスのような透明な瞳でわたしをだるそうに見つめる神木竜馬。


光に当たって青黒く見える少し長めの髪は、どこまでも黒く、不思議な雰囲気を漂わせている。


本当にこんな性格だったの…?


噂もあながち間違ってないじゃん…