「アンタ、朱羽が泣いてるの見たんでしょ?」



保健室のベッドに座り込んだ俺に、向かいで足も腕も組んで座ってる佐藤が責めるような口調で問いかけてきた。



俺はそれに黙って頷くしか出来ない。




泣いてる姿を初めて見て、



すっごいもどかしくなった。



アイツが悲しい思いをしてるなら、



俺が全部取っ払ってやるから、


昨日俺に見せたみたいな笑顔をずっと浮かべてて欲しい。



でも、



もし泣いてた理由が、



俺と別れたことが悲しくて泣いてるなら、



不謹慎だけど、俺は嬉しいって思ってしまう……。



そんな自惚れがさっきから頭を掠めては打ち消されていく。




膝の上で組んでいた手をじっと見つめた。



「ニッッブい男。イライラするわっ」


「イタッ!」


後頭部に響いた鈍い痛みに俺は、思わず俯いていた顔を上げた。



目の前に居るのは勿論佐藤。



さっきまで座っていた椅子から立ち上がり、胸の前には力強く握られた拳……。



荒げた声に反して、その顔は相変わらず冷めた無表情。



そのアンバランスが逆に怖い……。