村田くんが言うように、バスケ部マネージャーは顧問の方針もあって割と厳しく躾られていた。



そのため、相手の中学に怪我人が出たりしたときも、率先して動かされていた。



だから、



「……わたし、いつ誰を手当てしたかなんて覚えてない」



正直言うと、中学時代の理緒くんとの面識なんて覚えてない。



「朱ちゃんにとっては大勢の中の一人でも、理緒にとって朱ちゃんはたった一人だから」



村田くんが切なげに笑う。



それがまるで、理緒くんの心を代弁してるみたいで……思わず胸が痛む……。



「理緒が中学の時から片想いし続けてるたった一人の女の子」



「……片、想い?」



「そう。……だから理緒は朱ちゃんの恋を成就させる為に、朱ちゃんを俺好みの女の子にしようとしたんだ。多分」



わたしが村田くんに見合った女の子になれるように、



理緒くんはわたしを彼女にして、



村田くんの好みを暗に教えてくれてたんだ……。



「伝わりにくいよなぁ。アイツの優しさ」



こう言って力無く笑う村田くんに、わたしは何も言えずに目を伏せた。