「ねぇ、理緒くん?」


「なに?」



「これ……怖い映画?」




「そうだな」



映画が始まって三十分……。



通りでさっきから薄暗い画面ばっかりなわけだ……。




「……わたし帰る」



「ダメだ。観てけ」



こう言って、立ち上がったわたしの腕を素早く握る。



「ヤだー!! 鬼ぃ!! 悪魔ぁ!!」



必死で逃れようとするわたしを、



「バカ。今から面白くなってくるんだろっ。ほら、座れ」



理緒くんが自分の前に座らせる。



更に、後ろからわたしの手をしっかりと握った。



急に密着度が高くなって思わずドキッ……。



そっと理緒くんの方に振り返ると、





「……逃げらんないから」




「っ!!??」




耳元で悪魔が囁いた……。




こうして、



わたしは残り一時間半の恐怖に脇目もふらず叫び続けた……。




まさか……、




これから毎日観る羽目になるなんて、



この時のわたしは知る由も無かった……。