「おい待てって…ん?」
暗いビルの隙間に来たと思えば、ドラゴンが急に止まった。
そしてオレを見つめる。
「こんな所に連れてきて何の……」
ドラゴンの先には、オレぐらいかオレより1つか2つ年下の女の子がうずくまっていた。
「大丈夫かっ?」
ひどく汚れた服を着ていた。
少女はオレを見て、首を横に振った。
まるで"怖い"、"近付かないで"と言っているようだった。
「怪我もしてんじゃんか!どっかで手当てしなきゃ…」
そう言っても少女はそこから動く気はないみたいだ。
必死に首を横に振って、"気にしないで"と伝えているかのよう。
「ほっとけねぇっての!ほら」
オレはおんぶしようと少女の前にしゃがんだ。
少女は困ったように下に顔を向けた。
ドラゴンは"キュー"と言いながら少女の服の袖を引っ張っている。
「大丈夫。何もしねーから」
微笑みながら言うと、少女は少しオレを見て躊躇いながらも背中に乗ってきた。
少女はとても軽かった。
しかしまた頭に乗ってきたドラゴンは重かった。
あまり人のいない公園みたいな所で少女を降ろした。
カバンから傷薬と包帯を出して、傷付いている少女の腕を手当てした。
ドラゴンの卵が消えているのにオレは気がつかなかった。
「っし、終わったぜ」
オレはニッと笑った。
少女はオレを見て、ぺこりとお辞儀をした。
「いいって、気にすんな!」
"キュー"
ドラゴンは相変わらず少女にぴったりだ。
「どーやらソイツに好かれてるみてぇだな。オレは嫌われてるけど」
少女は一度オレをきょとんと見てから、ドラゴンを見た。
そしてそっと頭を撫でた。ドラゴンは気持ちよさそうだ。
