「裕舞!準備できた!?早くいこ!」
そう言ってひよりちゃんは僕の手を強く引いた。
物心ついた時からひよりちゃんは、こうやって僕の手を引いてくれている。
大切な幼馴染だ。
「高校でもいっぱい友達できるといいね!」
ひよりちゃんの周りには人が集まってくる。
僕は自分から人と仲良くするのが得意じゃなくて、いつもひよりちゃんの後ろに隠れてたんだ。
「ひよりちゃん!」
「んー?」
ひよりちゃんの手が離れる。
振り向いたひよりちゃんのスカートがふわりと揺れた。
いつの間にか同じくらいの目線。
僕の方が随分と小さかったのに。
「制服、よく似合ってるね!」
中学校までのセーラー服とは違う胸にリボンのついた紺のブレザーは、大人っぽくてひよりちゃんによく似合っていた。
「ありがと!裕舞も制服似合ってるよ!」
はやくいこ!とひよりちゃんは歩き出した。
急に吹き抜けた風が鼻まで伸びた僕の前髪をかきあげた。
春の匂いがする。
楽しい高校生活になればいいな。