夕暮れに染まるまで

 絡まる視線を逸らせないまま固まっていると、目の前にある透花の瞳がふっと柔い色を見せた。

「前、一緒に……お弁当食べたこともあったね、ここで」

 細い指先が肩に揺れる髪を巻き付けていく。

 照れた時の透花の癖。

「誘ってもあんまり来てくれなかったけど」

「しょうがないだろ。一年の時はクラスも違ったし、他の奴らだって色々」

「うん。だからね、ここ見つけた時はラッキーって思ったんだ。ここだったら誰にも見つからないし、だから夕輝もたまに昼休み来てくれて……」

「え……?」

 俺はその言葉の真意を問うように聞き返す。

 だってその言い方はまるで――けれど透花はそれ以上何も言わず、景色の方に目線を戻してしまった。

「私達さ、ほんとにずっと一緒だったよね」

「ああ」

 中途半端に抱いた期待は、激しい心臓の鼓動に形を変えて俺の胸を打っている。

「クラスもほとんど同じだったもんね。すごいよね。ねえ、初めて会ってからもう何年だっけ」

「多分、十年くらいにはなるんじゃねぇの」

 十年かあ、と透花はため息交じりに笑う。

「長いね」

「ああ」

 そしてどちらからともなく口を閉ざす。

 いつの間にか風はやんで、太陽の光だけがまっすぐに届いていた。