夕暮れに染まるまで

「な、なんでお前がそれ知ってるんだよ!」

「噂で聞いたの!」

 俺はもう頭を抱えるしかない。

「あーもう、誰だよ言ったのは」

「で、本当なの、嘘なのどっち?」

「……本当だよ」

 そう返しても透花は窓の外を向いたままでその表情は分からない。

 ただ小さくふうん、とだけ言ってそのまま黙りこんでしまう。

「別に、隠してたわけじゃないけど」

 二人の間に気まずい沈黙が降りる。

 俺はこれ以上どう言えば良いのか分からず透花から目を逸らした。

 やけにはっきり聞こえてくる壁時計の音がカチカチと俺を追い詰める。
 
 流石に何か言わなくてはと口を開いたその時、透花が呟きのような言葉をもらした。

「なんて……」

「え?」

「なんて答えたの? 夕輝……」

 問いかけるその声音が思いの外しおらしくてどぎまぎしてしまう。

「断ったよ、ちゃんと」

 風が髪をなびかせていく。

「好きな奴がいるって……」

 俺は恥ずかしさに口元を抑えて俯いた。

 ほとんど告白の様な覚悟を持って言った言葉にも、透花はふうんとしか答えなかった。