夕暮れに染まるまで

「夕輝……」

 掠れた声がそう紡ぐ。

 ――と、その小さな唇がくしゃりと歪んだかと思うと、叫びのような泣き声が堰を切ったように溢れ出した。

「嫌だ、夕輝、嫌だよ。私やっぱり死にたくない。怖い、怖いよ」

 顔を手で覆ってその場に崩れ落ちる。

「こんなの嫌だぁ。夕輝、助けて、助けてよぉ……」

 俺は正面にかがんで、透花を力一杯抱きしめた。

 俺だけでは受け止めきれない透花の感情を、それでもこぼさないようにと、ただ体を寄せる。

「透花、大丈夫だ。俺がいる。俺がここにいるから。大丈夫だ、大丈夫。ずっと一緒にいるから……」

 苦しげにしゃくりあげている透花に俺の言葉が届いているかは分からない。

 それでも大丈夫、大丈夫と繰り返して、震える背中をさすり続けた。

「夕輝……」

 何度も咳き込んで、荒い呼吸を繰り返した後、やっと落ち着いたらしい透花がぐしゃぐしゃになった顔を上げた。

「ありがと」

 俺はこすりすぎて真っ赤になった透花の目元をなでながら笑った。

「ひでぇ顔……」

 うっすらと微笑んだ透花が負けじと俺の鼻をつまむ。

「もう。人の事言えないでしょ」

「やっぱり、笑ってる方がお前らしくていいよ」

 透花の指をそのままにこもった声で俺が言うと、透花が顔を真っ赤にして鼻から手を離した。