夕暮れに染まるまで

「新型の生物兵器だってさ」

 すすり泣きや誰かを呼ぶ叫び声が飛び交う中で俺達二人は隅の方に座りこんでいた。

「アメリカで秘密裏に作っていた物が、何かのはずみで外に漏れたらしい。その威力は思いもよらないほど強力で、あっという間に……」

 そんな、と透花は力なく呟く。

「こうやって逃げられた分、ここはまだましな方だ。他の国はきっと、もうとっくに」

 俺はそこで口を閉ざす。今の透花に最後まで言ってしまうのは酷だった。

「お母さん達はどこにいるの? ……また会える?」

 俺は何も答えてやることができない。

 耳にこびりついたあのサイレンに、視界がまだぐらぐらと揺れていた。