それから2ヶ月。
じいちゃんは静かに息を引き取った。

お葬式の日、じいちゃんの棺の中に、子供用のTシャツが入れてあるのを、ばあちゃんに聞いた。
ばあちゃんは笑いながら

「おじいちゃんが、大きいおばあちゃんを困らせてたワンパク小僧さんだったころ、着ていたものなのよ」

って、教えてくれた。
大ばあちゃんがすぐに自分だってわかるように、これを着て行くんだって、子供のころからずっと捨てずに仕舞っていたらしい。

たくさんの人が来てくれて、賑やかに、じいちゃんの思い出を話しては懐かしがってくれて、和やかなお葬式だったと、ぼくは思う。


お葬式の帰り、父さんと母さんと、三人で並んで歩きながら、そういえば、小学校卒業してから、部活が忙しくて、あんまりこうして三人で歩くこともなくなったな、なんて思った。

「寂しくなっちゃうね」

母さんが小さく呟いた。

「そうだな…酒好きで、話好きで、陽気なじいちゃんだったからな」

父さんも寂しそうに言った。

『ユウ、悲しむことないんだ』

ぼくは、じいちゃんの幸せそうな顔を思い出した。

『じいちゃんは生きた。精一杯生きた』

誇らしそうな口振りを、思い出した。

「じいちゃんさ、今ごろ…大ばあちゃんに、会えたかな…大じいちゃんや、大おばさん達にも」

父さんと母さんは、二人で顔を見合わせ、ぼくに頷いた。

「きっと、会えたよね」

「今ごろ、みんなで宴会してるぞ、きっと」

そう。ぼくは信じている。
今ごろじいちゃんは、あの不思議な電車に乗って、大ばあちゃんの待ってる駅に行っているんだと。
みんなが待ってる懐かしい家に帰って、あの時できなかったかくれんぼの続きをしたり、くるるんに行ったり、豆腐のドーナツを作ってもらってるんだって。



『ユウ、お前も、精一杯生きろよ』

この先、どんな試練がぼくを待っているのかわからない。
どんな希望があるのか、まだぼくは知らない。
でも、これだけは、言えるよ。

「挫けるかもしれない。めげるかもしれない。でも、精一杯、生き抜いてみるよ。じいちゃん」