俺と華はベンチに座って、すぐそこの自動販売機で買った缶コーヒーを飲んだ。

「先生どうしたの」

俺は華の問いに答えずに華の頭を撫でた。


「、、どんな気持ち?」

「え?」

「俺に頭撫でられたらどんな気持ち?」

「、、わかんないけど、気持ちいい」

華はいつも通りだ。
大人びた顔で子供のようなことばかり言う。

俺は華の頭から手を離した。


「ねえ、どうしたの」

華は俺の頬を細い指でつまんでさっきより強い口調で言った。


「なんか今日変だよ、学校でぶつかった時も。
急に電話かかってきたからびっくりした」


俺は華の手を払いのけて、華を抱きしめた。

「、、俺は数学も教えれる」

華はなんのことかすぐに察したようだった。

「1問だけ教えてもらっただけだよ。
先生、お酒飲んだでしょ」

「、、うん」

「それだけ言いにきたの?」

「、、違う」

会いたかった。
華の可愛い顔を誰にも見られたくなかった。

素直に言えればいいのに、と心の底から自分を憎んだ。


「数学教えてね」

華は俺の腕の中でじっとしたまま言って、

よしよし、と子供をあやすように俺の頭を撫でた。