「どうしてもダメ?
 彼氏とかいるの?」

おっと、夏川くん意外にしつこい。

でもごめんね。
どーーしても、ダメ、なんだ。

彼氏が………いる………と言えるのかなぁ…。
まぁ、ほら、さっきも言ったみたいにちょっとここんとこDeepなもんで、さ。

「ごめんなさい」


あたしにできるのは、ただ頭を下げることだけ。
理由は、多分言っても分かってくれないだろうから。

だけど、二度も謝ったことで、彼の自尊心をよけい傷付けちゃったみたい。

あーー

恋愛って難しいよー


しばらく放心状態だった夏川くんは、ふらふらと立ち去って行った。
決して振り返らずに。

やっぱイケメンくんのプライドって、なかなかのもんね。

ハァ――――。

溜め息とともに、胸の痛みだけが後をひく。

ちくちくちく。

決して深く突き刺さるわけじゃなく、それでいて表面だけをつついてかきみだしていく。

人を振るのって、嫌なもんね。

あたしもトボトボと歩き出す。


ちくちくは、まだしばらく、消えそうにない。