そのまま私の身体を引き寄せ、額に口づけをすると、彼の瞼は徐々に閉じていった。

おでこにキスされた。

彼の唇の余韻にドキドキし数秒後、私はハッとする。我にかえった。

現実が一気に迫ってきて、彼の綺麗な顔から視線をそらした。

自分たちが付き合ってることにしてしまえばいい。

そんな流れになったけれど、本当に付き合ってるわけではない。

ほんの一瞬ではあったけれど、彼に大切にされてると、本気で思ってしまった自分が怖い。

それに彼は、倉渕物産のご子息であり、父は倉渕君のお父さんのことを目の敵のように嫌っている。

私の縁談が母の主導のもと進められていることだったとしても、倉渕君が好きだなんて、ましてや彼とお付き合いしてる、いずれ結婚したいなんて口にしたら……間違いなく、父は激怒する。

揉めに揉めて、西沖家だけにとどまらず、遅かれ早かれ倉渕家をも巻き込んでの大騒動へと発展してしまうだろう。

このまま私の問題に彼を巻き込んでしまっていいのだろうか。

彼を巻きこみ、倉渕物産をも巻き込む事態になってしまったら、迷惑をかけてしまったら……大変なことになってしまう!