「悪い。西沖が結婚とか、まったく想像できないっていうか。結婚とか一生無理だろうなって思ってた」
「なにそれ。無理とか、ひどくない?」
「西沖は結婚と無縁の人生を送りそうな気がしてたから、俺今すごいびっくりしてる」
「やめてー! 倉渕君にそんなこと言われたら、本当にそうなっちゃう気がする!」
こんな自分だけど、いつかは結婚できると信じている。
優しい旦那様との甘い新婚生活を夢みているというのに……大事に温めている思いを全否定された気分である。
「とりあえず、おめでとう?」
「おめでとうじゃない! まったくめでたくない!」
めでたいはずがないという憤りが心の中で渦巻き始めれば、自分の心の中に違う感情があることに気付かされる。
面白くない。倉渕君には“おめでとう”なんて言われたくなかった。言わないで欲しかった。
飲みなれないお酒が入ったせいもあるのかもしれないけど、笑っちゃうくらい悲しくなってくる。感情のコントロールが利かなくなってきている。
亜由子が運んできたビールを奪い取り、勢いに任せて飲みながら、ちらりと倉渕君を盗み見た。彼は頬杖をついたまま、難しい顔をしている。



