実家から逃げ出すため、窓のすぐ外に植えられていた木を伝っておりようとしたのだ。
飛び移った枝は、私の重みにも耐えうる強度を持っていた。手に汗を滲ませながら、慎重に下へ下へと移動した。
しかし、地面が近くなってきて、あと少しで降りられると安心した瞬間、足を滑らせ落ちてしまったのだ。
油断してしまった結果、足首を捻り、手首にかすり傷を負ったのだ。
「遊んでた訳じゃないわよ! いろいろ事情があったの」
「事情って?」
そこは言いたくなくて口を閉じると、「また黙秘か」と倉渕君がぼやいた。
そっぽを向くと、カウンターの向こうから隅田君が話しかけてきた。
「何か食べるか?」
「あぁ。適当に二人分用意して」
「あのっ! ちょっと待って!」
「了解」
私がお財布を持ってないことを知ってるくせに、隅田君は倉渕君とだけ会話をし、厨房へと消えていく。
亜由子と私が友達であるように、倉渕くんもまた隅田君と古くからの友達である。
思えば、私が倉渕君と普通に話すようになったのも、亜由子と隅田君が仲良くなったのが切っ掛けだった。



