怒りと共に低く発せられた言葉に、大きく顔を歪ませ、美紀も一歩、また一歩と、後退していく。

私の身体を抱き締め直しながら、遼は父へと顔を向けた。


「父と貴方の間にあるわだかまりなど、俺たちには関係ない。俺は誰よりも麻莉を大切に思っています。他の誰かではなく自分のこの手で、彼女を幸せにしたい。傷つけようとするすべての物から、彼女を守りたい」


すっと息を吸い込み、曇りなき声で宣言する。


「俺は麻莉と結婚します」


顔をあげれば、遼は私と目を合わせにこりと微笑みかけてくる。


「誰よりも幸せにする」


くれた言葉に胸が震えた。嬉しくて笑顔になってしまうのに、涙が溢れてくる。


「必ず」


甘くて優しい誓いを立てるように、遼が私の額に口づけを落とした。