私の隣で足を止めている喜多さんに一声かけ、スマホを耳に押し当てた。
コール音が鳴り、また少しホッとする。これで遼と話ができる。
「なんだよ。待ちきれないのか?」
ちょっぴり意地悪な言い方なのに、声はすごく優しくて、甘くて、じわりと心の中に温かさが広がっていく。
胸がいっぱいですぐに返事ができなかった。深呼吸してからやっと「遼」と呼びかける。
「麻莉、どうかしたのか?」
「今どこ?」
「駐車場について車から降りたところだ。何かあったのか? そっちこそ、今どこにいる」
一階のエレベーターの前。そう答えようとした瞬間、スマホを持っている右手の手首を強く掴まれた。
傷口に容赦ない痛みが走り、スマホを取り落としてしまう。
美紀が私の手首を掴んだまま、落ちたスマホを顎で指し示すと、すぐに斉木さんがそれを拾いあげた。
美紀は斉木さんから差し出されたスマホを受け取ると、私を呼ぶ遼の声が微かに聞こえるスマホの電源を落として、斉木さんの手の平の上へと戻した。
「麻莉お嬢様」
強張った声を耳にしドキリとさせられる。見れば、スーツ姿の男性二人に喜多さんが両脇を抱えられてしまっていた。



