「うちの親父と麻莉の父さんって、学生のころお互いをライバル視してたらしいな。いちいち競い合ってたって聞いたことがある」

「お父さんと?」


私の問いかけに、遼は軽く頷きながらワインを一口飲む。


「そっか。それなら余計、遼のお父さんに嫉妬していたかも。亡くなった私のお母さんが遼のお父さんの幼馴染だったってこと、知ってる?」

「いや、初めて聞いた。幼馴染か」

「なんとなくだけどさ……お母さんと遼のお父さん、仲良かっただろうなって思うんだよね」


愛情を抱くほどの関係だったのか、それとも友情という強い結びつきで繋がっていたのか、そこまでは分からないけれど、この前母の話をしてくれた時の遼のお父さんの表情は、確かな優しさに満ちていた。


「いろんな感情が複雑に絡み合ったうえでのライバル関係だったのかもしれないな。麻莉のお母さんが亡くなってしまったから、わだかまりがさらに根深いものになり、今に至る」


淡々とした口調でされる遼の予想に、同意する。


「遼のお父さんは歩み寄ろうとしてくれても、私の父さんは反対の意思を崩さないと思う。それに美紀のこともあるし、どう来るか不安」