「いやぁ~、今日の授業もまたつまらなかったっすねー」
「そうだな。あ、ジュース奢ってくれんだっけ?暑いから奢ってくんね?」
今は真夏。額から落ちる汗を拭いながら夜神は言う。
「あっ...ああそうっすね」
拓人はそう言いながらスクールバッグから財布を取り出す。
「で、どれがいいんすか?」
「んー、じゃあこれでいいや」
夜神は自販機の右上にある炭酸飲料を指差した。
「夜神、炭酸飲料飲めるんすね」
「お前は飲めないのか?」
ペットボトルのキャップを回しながら聞く。
「俺は飲めないっすねー...炭酸って痺れるから嫌いなんすよ」
「ふーん」
「あっ俺、こっちに用があるんで」
拓人はそう言いながら夜神とは別の道へ向かう。
「おう、じゃあな」
暑い日差しを浴びながら夜神は下校路を歩いていく。
「ウィンドリヒトゥング ノルトヴェステン」
聞き慣れたような言葉を聞いて夜神は後ろを振り向くと、生ぬるい風が体中に吹きつけてきた。
「突然すみませんね。私も貴方と同じ能力者でして。」
突然の事に夜神は動揺を隠せなかった。
(能力者?そんなものが俺以外にもいるっていうのか?それに何なんだこいつは)
「で、俺に何の用だ」
「貴方は能力者の中でもかなり優れた能力をお持ちのようですから、直接お相手がしたくて」
「ちょっと待て、“能力者の中でも”?俺みたいな能力者が他にもわんさかいるっていうのか?」
「おや?能力者の事について何も知らないのですか?」
「知らねえな。この能力は何年か前に気づいただけだからな...まあ、周りからは化け物だのなんだの言われて故郷を追い出されたけどな...」
「まあ、極普通の人間には能力というものを理解できないでしょうからね。ところで貴方は能力について本当に何も知らないのですか?でしたら教えてあげても良いのですが...」
「ああ、教えてくれ」
「分かりました。ではお話ししましょう、能力の全てを」