「よっ、遅刻ギリギリだったぜ」
賑やかな教室の中にいる拓人に夜神は話しかける。
「や、夜神!?あいつらにボコボコにされたんじゃ...」
「ん?誰がボコボコにされたって?」
「あ、あいつらの事っすよ」
「俺があんなのに勝てるわけねえだろ」
夜神は笑う。
「じゃあどうやって逃げてきたんすか?」
拓人は机の上に置いてあったノートを片付けながら質問する。
「途中で警察が来てくれてさ、そんで俺は助かったってわけ...つーかお前、さっき逃げたろ?」
夜神は急に真顔になって拓人に問い詰める。
「あ、あのときのことは悪かったっすよ。ジュースでも奢るから、許してっすよ」
「まあ、いいや」
少し経ってから学校のチャイムが鳴り、担任が教室に入ってくる。さっきまで賑やかだった教室の中も、チャイムと同時に静かになった。
「これからホームルームを始める...が、その前に今さっき警察から入った情報を君たちに伝える。重要なことだからよく聞いておけ」
(もうバレてんのかよ)
「今日の8時頃にすぐそこの住宅街でまた爆発事件があったそうだ。そこには5人の暴力団員が手足を失った状態で倒れていたとのこと。今回も原因不明の爆発事件でなんの手掛かりも掴めていないそうだ。犯人は未だ逃走中だから今日の部活は中止し、完全下校とする」
「えぇー」
「部活ねーのかよー」
クラス中で不満の声が上がる。
(部活なんてどうだっていいだろ)
「夜神は部活やってないから関係ないっすね」
「ああ、そうだな」
夜神は答えながら教室の壁に掛かった時計を見上げる。
(今日もまただるい授業をやんのか...学校なんてあいつに会うために来てるようなもんだしな...)
あいつとはこのクラスから1つ離れたクラスにいる東風谷穂乃という子だ。
東風谷は学校内で明るすぎず暗すぎない、普通の女の子だが夜神はこの子に何か魅力を感じる。
(会話したくても俺は会話苦手だし、クラスも一緒になったことないし、喋ったこともないしな...)
夜神は外を見ながらそんなことを考えていた。