ノラと呼ばれた男【壱】

幸せが、両手から消えるのは一瞬で、





瞬き1つで、世界が変わった様にすら思えた――――――――――――……












ただただ、子供ながらに理解できたのは、



黄色い大きなトラックが、俺を引きかけた事と、


何故かママが自分を守ってくれた事だけ








「………………あ、………………い」




「ママ!?ママが助けてくれ…………………………え…………………………、」



回した手に、ドロリと付くそれは……あまりにも赤黒く、


鉄の臭いが鼻を付く







―――――――――――……血、




それは俺のではなく…………ママの血で







「ママ!?ママっ!


嘘、ママいっぱい血がっ、」




気付けば自然と、目に涙が溜まる。


怖い。って感情が渦巻くのは無理もなく、いつも笑ってる母親がぐったりと倒れている光景は………………、





悪夢。としか言いようがなかった



「あ………………い、」




「ま、…………ママっ」






伸ばされた手は、ゆっくりと俺の頭をいつもの様に撫でてくれて、


でも、それが……まるでお別れする仕草に思えた






「怪我…………は……………………な、い?」



と、一言一言を喋るたびに母の喉からは変な音が聞こえてくる。


ヒュー、ヒュー、ヒュー。と



風が泣いてる、みたいな。そんな音









「な、……いよ、怪我してないっ」



「そっ…………か…………………………守れて…………………………良かったわ、」








そんな言葉と共に、俺の頭を撫でていた手は力なく……するりと落ち、










母の呼吸が止まっていた―――――――――――――――……