ノラと呼ばれた男【壱】

家に帰れば、母親の姿がなく、

いつも開けっぱなしのドアには鍵がしてあった。今、思えば何処かに出掛けて居ないのだろうと分かるが、





当時の俺は母親が居ない=探さなきゃ


と言う考えに至った。

自分で言うのも何だが…ママっ子で、



小学4年で、未だ親離れすら出来ず、





友達と遊ぶより母と居る時間の方が楽しくて………………、



今日もまた、友達の誘いを断り早めに帰って来たのだが、







いつも、何かしら料理の香りを漂わせ庭にまで香ってくる良い匂いも、

電気を付け、明るい筈の家も、





全て異なる、その状況にゾッとした



嫌な予感だけが脳内を駆け巡り、最後に行き着くのは嫌な答えばかり…………、







「さ、……がさなきゃ」



――――――――――……探さなきゃ



――――――――――……ママを、



――――――――――……探さなきゃ!







何かに巻き込まれたのかもしれない、

何処かで迷子になってるかもしれない、






そんな、嫌な考えがグルグル回る。


いつもだったら、この時間に居ない。なんて事はなかった。





いつも「お帰りっ!」って言ってくれるんだ






―――――――――……ママを探さなきゃっ!





背負っていたランドセルを放り投げ、俺は慌てて庭を飛び出した。