ノラと呼ばれた男【壱】

◆◆◆

倉庫の中に入ると、大勢のカラフル頭が目についた。

倉庫内でバイクを弄る奴。
戯れてる奴。
ケータイで音楽を聞いてる奴。

してる事はバラバラで、誰もが好き勝手していた。




そう、第三者が声を掛けるまでは。






「あ!迅さん、ちーっす!」


髪の毛を全剃りにしてる、低身長の男が90度くらいで頭を下げた瞬間、

ざわりと空気が変わり、

バイクを弄っていた奴も。
戯れてた奴も。
ケータイで音楽聞いて奴も。



満面の笑みで側にくる。

「お疲れ様です、迅さんっ」



「ちわっす!」



「お久です迅さん!」




わらわらと集まる集団に、「おう」っと返事をしながら片手を上げる

そんな中、不意に向けられる視線。

敵意。ではなく、不思議な顔して純粋に「誰?」って言いたげな顔。





それに気付いたらしい迅が口を開くが、


「嗚呼、こいつは、」


と。言いかけて言葉を切り。口角だけを上げた。






「また後で話す。それより、数分後くらいに客がくる。喧嘩はするなよ」



と、意味有げな台詞を吐いた後、2階に続く階段を上がる迅

思わず立ち止まった私に、迅が振り返り、片手を差し出した





「繋ぐか?」


意外にも、顔は無表情ではなく……意地悪な笑みを浮かべてて。

思わず唇を尖らせた



「…………繋がなくても歩ける」



「なら止まるな」

などと言いながら笑う迅に、周囲のいたヤンキー君たちは驚愕していた。




‘’え。迅さんが笑った?‘’



‘’あの子、迅さんの何?‘’



‘’俺、迅さんの笑顔初めて見た!‘’






などなど。ねぇ、迅、アンタどんだけ無表情な顔してたのよ!?

その使ってない表情筋ちゃんと使いなさいよ←





無駄にイケメンだと、無表情って逆に迫力あるって知ってた?

黙って立っててみ?子供が泣くで?




「と、……止まってない、し」




「へぇ。なら前歩くか」




「いえ、結構です」


てか、何処に何の部屋があるか分かんないのに、「前歩くか」って……ムリムリムリ100%迷いますから←ぇ

思わず迅の背中を押しながら、首を横に振る












そんな私たちの姿を、下から見ていた彼等(ヤンキー君)らは……と言うと






‘’微笑ましいっすね‘’



皆が温かい視線を送っていた事など知る筈もなく、


気づけば1つの部屋の前へと辿り着いていた








「ん」


開けてみな、と、言いたげな顔で一歩下がる迅

え。ここは普通に迅が開けるんじゃ…

なんて思いながら、ドアノブを捻ってドアを開けば…………………………、








――――――……パンッ

――――――……パンッ、パンッ!!



開いたと同時に響く、クラッカーの音