ノラと呼ばれた男【壱】

ぼぅ、とする私の頭を迅がくしゃりと撫でて、






「置いてくぞ」


先を歩き出す迅の後ろ姿を見て、我へと返る。今、見てる光景、今、側に居てくれる人は……前と違うけど、

同じくらい温かくて、安心できる





「あっ、ずるいっ、待って!




……………………って、此処は、」


と、慌てて駆け出す私の足を止めたのは意外にもすぐで。前を歩く迅を見た瞬間、脚が止まった。

いや、正確に言うと迅の目指す場所を見て、脚が動かなくなった




外観から見て、二階建ての木造作りの建物。そして、それらを取り巻くように停められているバイクたち。

どこからどう見ても、これは…………、









「俺らの溜まり場」


ですよね。所謂「倉庫」ですよね

……………………って、ちょっと待て





いやいやいやいやいや、え、何、私入るの!?………………え?まじで?


だって此処って、皆にとって大切な場所でしょ?私が入っていいの?








と、一人、葛藤してる中。


不意に迅の携帯が鳴り響く

「ん。どうした」

と、低く出た声は決して不機嫌とかではなく。いつも通り。寧ろ、口角が心なしか上がってさえ見える



「いや、もう着いた」



と、呟き、迅が私に携帯を渡すから耳に当てると、




〈おそーいっ!!早くおいでよ姫♪〉



と。明るい藍の声と共に「待たせる気か、バカ女」と失礼極まりない事を言う単細胞

なんか、最近、やたら「ばか」って言われるけど時雨にだけは言われたくないね←





って。話し脱線したじゃん時雨のバカ

思わず、そのまま電話をブチって迅に携帯を返せば、











「だとさ、皆待ってる」




目元を緩めて微笑む迅と目があった