ノラと呼ばれた男【壱】

腰を折り、唇を耳元に近付けられ、

くすぐったくて肩を竦めれば、ふわりと香るシトラスの匂い。






















「貴女に潰してほしいんです、」




と。甘く囁かれた言葉は、浮かべている笑みと異なり……、



「貴女にしか、できないでしょ?」








あまりにも、残酷で冷たい言葉。

そのお陰で思考停止していた頭がフル回転するのが自分でも分かった



何言ってんの?

そう問いかけた唇を、奴の人差し指が軽く私の唇を押す。



視線だけが交差する中、ふっ、と奴が息を吐く










「敵か味方か、なんて見極めなくていい






ずっと待ってたんですよ、……貴女を」














そして、最後に囁かれた言葉に、




私は息を飲む。

















「――――――……俺を潰して下さい、
















………………………………一華さん、…………いえ、………………ノラ様」